大好きの代わりに

前を向いていたい私たち 素直になろうよ すてきな絵を飾って 日々日々、あなたが隣にいてくれたら どんなに幸せでしょう 昨日もふたりで笑ったし今日も笑うし きっと明日も笑うでしょう 大きな秘密をかかえて 2人で迎える世界は 甘くすこしぼやけて はじまり…

テレビドキュメンタリーを撮る仕事のこと

よく晴れた日の秋晴れは、犬が死んだ日のことを思い出す。朝、多分最も美しい朝の時間に彼は旅立った。その日は雲ひとつない晴天で、きっと迷うことなく天国に行けるだろうと思えるような日だった。わたしも、死ぬ日を選べるならあんな日がいい。君は本当に…

いつまでも幸せに暮らしたかったひとだらけだから世界は続いてきたのだ

地上にあるもの全てを焼き尽くそうとする日差しの中をなんとかかいくぐって生きている。人間はみな日傘の下で死んだ顔をしていて、草木ばかりが青青と太陽のことを信じている。いいなわたしもそんなふうに、あの灼熱の塊を恨まず生きていきたいな。そうは願…

ある日の歌舞伎町とそこから始まった出来事のこと。

「次は新宿、新宿」 丸の内線でこの駅の名前が告げられると、そわそわとつま先が所在なさげに動く。ドアが閉まる直前まで、降りるかどうかを迷い、一息ついて、人混みに巻き込まれたせいにして降りてしまう。年が明けてから週に2,3回、こんなことを繰り返…

個人的な出来事と社会的な出来事の距離について(2022年上半期)

「あけましておめでとうございます」 コロナの影響がまだうっすらと残る2022年の始まりであった。10人以上の親戚が集まり宴会が催される新年会は規模が縮小され、「あけましておめでとう」を玄関先で告げるにとどまった。25歳になる年であるが、わたしはちゃ…

おてがみ

前略 大好きなあなたへ あなたと会わない間に季節を一つ通り過ぎて、2つ3つ、季節の花も変わったかしら。きっとあなたはそんな情緒に揺られることもなく、怒涛のように過ぎ去る毎日を仕事に溶かして、さぞ忙しく過ごされていることでしょう。 体のことが最…

淡々かつ粛々とこなす日々を「元気だよ」と言う。

3月。学生だった時よりも、その季節特別に感じない。 私はもう何からも卒業しないし、どこへも入学しない。今まで、ぼーっとしてても着々と日々は進んでいたのは、学生という管理された身分だったからであって、本当は私は何一つ日々をこなしていなかったの…

わたしのものになってきた うす暗くあたたかい巣 206

■目覚ましで起きられなかった だめな朝の コーヒーが今日の私を生かす 7時半に設定しているはずの目覚まし時計が、ついに消した記憶もないのに消えているという事態になってきた。そろそろ自分の怠惰を見直したいが、だめだ。あきらめながら、燦燦と日が差す…

最高気温10度に届かないとか 眠っていたら季節が変わった

◾️音楽が果てた静寂 夢のまにまに わたしのあとをそっとぬぐう 最近はプレイリストをループでかけることができるのであまり音楽が途絶えることってないけれど、レコードをかけるといずれ終わりが来る。沈黙を埋めなくちゃって、慌てて盤をひっくり返そうとし…

スナップ写真のようだな短歌ってなんちゃってだから怒られそうだな

あまりにもすてきな髪と肌をしている 黙っていてもおとぎ話 待ち合わせ3回延びて保留 好きじゃなかったら怒ってないよ 干支二周回遅れとか信じられん 長距離走なら泣いて済むのに ベッドのことを「おふとん」という君の育ちの柔らかさを思う お礼にと君がく…

死んだ犬の話

彼と会ったのは私がまだ世の中のことなんにもしらない子どもだったころ。 ハムスターの餌を買いに来たペットショップで、気づいたら、お父さんの手のひらに小さい犬が乗っていた。お母さんが、見たこともないくらい甘い笑顔で、「どうしよう」と言って、その…

星の王子さまとキツネの話

「下心があるのが恋、真心があるのが愛」 「恋は求めるもの、愛は捧げるもの」 そんなことをいちいち考えて人を愛したりなんかふつうしない。「恋に落ちた」と思ったら、世界中のどんな口説き文句も、ラブソングも白々しい。この気持ちは自分だけのもの。抱…

遠い夜に

とても遠い夜に来た。 月を追いかけて。あるいは野良猫がたくさんいる街を捜し歩いていて。 街の明かりが見えない場所を探して。先日降った雨の水たまりを探して。 とても遠い夜に来た。 あの日別れた人に、伝えていなかったことを思い出して。 電車に置き忘…

愛している、が、ちゃんと伝わっているかしら。  

愛している、が、ちゃんと伝わっているかしら。 「愛している」と誰かに言われると、犬がお手の芸をするみたいに「愛している」と答えてしまう。わたしはとても人を愛したがるから、これは本当に「愛している」なのかしらとときどき厳しく問いたださなきゃい…

犬の話

犬派か猫派か、という問いがよくある。 さして話したいこともないときに、こういう、どちらの方がいいかという話題に人は流れがちだ。ほかにも山派/海派かとか、きのこ派/たけのこ派かとか。大人になってからは日本酒の甘口/辛口かという話にもよくなるし…

夕暮れと春風と交差点

3月に入って日が長くなってきたことが、ここ最近で一番うれしい。 私は、午後の4時から5時にかけて日が暮れていく時間が好きだ。その時間帯をゆっくりと楽しむには、春と秋が最適だ。夏だとまだかまだかとじれったくなり、冬だと駆け足で通り過ぎていくそ…

探していた物語

小学校高学年から高校を卒業するまで、わたしは半分物語の中に浸りながら生きていた。今ではだいぶ現実が忙しくなり、物語を空想する機会が減ったけれど。 読み返してみると、自分が好きなものだけかき集めただけあって、どれも悪くない。ストーリーは陳腐な…

本の感想『革命前夜』

『革命前夜』須賀しのぶ著 舞台は東西分裂時代の東ドイツ。教科書のように正確なピアノの演奏を得意とする主人公マヤマシュウジがバッハの故郷へ留学し、そこで出会う音楽仲間との人間関係を描く青春小説です。 氷のように冷たい殻で心を閉ざしたオルガン奏…

諦めること

生きて踊ろう、僕らずっと独りだと諦め進もう 1人歌おう、悲しみの向こう 全ての歌で手を繋ごう 生きて抱き合おう、いつかそれぞれの愛を重ねられるように 紅白歌合戦で星野源が披露したパフォーマンス「うちで踊ろう(大晦日)フルバージョン」は、すっかり…

2020-2021

この記事は、2020年を振り返り、2021年ってこんな感じかな?と空想する、自分のための書置きだ。 ...... 2020年はまるでタイムマシンの中にいたみたいに、今までの自分の日常とつながりがない年だった。 自分が納得しているかいないかに関わらず、外出を自粛…

金木犀の香りってググってもわかんないんだもん。

押上の町、路地の中のごくごく客の少ない鉄板焼き屋で海鮮ミックスもんじゃを熱い鉄板の上におしひろげながら、彼は「え~、、うーん」と、唸っていた。 聞けば、巷でいうところの金木犀の香りがわからない、という。10月始め、姿は見えないのにやたら存在感…

隣の席の女が言うことには

「今日私があなたの家に行くこともそのまま泊ることも、神様が決めてるのかな?」って聞いたら、あなたどんな顔するかしら。あなたがどう答えようと、あたしは絶対、「あたしが決めたことだもん」と言い張るつもりでした。 私は行儀のいい娘だから、今は家族…

「エモ」という感性とその背景

「だらしない男女関係にタバコやら夏やらが絡んだとたん「エモい」と形容する価値観にきちんとキショいと思えるようになってからが大人のはじまり。」というツイートを見た。近年若い人たちが感情を説明するときによく使う言葉「エモい」に対する抗議の当該…

さらば140文字の思考

ぼくは高校生の頃からツイッターを使っている。 高校生のぼくにはクラスに友達がいなかったから、ツイッターで知らない人からいいねがもらえるのとかがとても嬉しかった。多いときでは3つくらいアカウントを持っていて、いろんな人をフォローしていた。世界…

あの日のタコへ

最近興味あるものはなんですか? ある日突然、知人にそう訊かれて、答えに窮してしまったが、今では胸を張って堂々と「タコに興味があります」と言ってみたい。 タコの驚くべき知性に関しては既にちらほらと話題になっている。閉じ込められた瓶から脱出した…

別れる女には音楽を教えておきなさい。

何気なく入った洋服屋さんでクラブミュージックのカバーが流れた。どこかで聞いたことがある曲だなと10秒間考えて、それが以前付き合っていた人がわたしに勧めた曲だったことに気付いた。 人の好みに染まりやすいわたしは、その人勧めてくれる曲ばかりを聞い…

夏のいいなり

「夏っていうだけとっても楽しい気もちになって、本当は別になにもしてないのに、なにかをした気になっちゃうから、夏ってほんとに危ないと思う。」 スーパーで買ったオレンジジュースを担いで帰る帰り道、わたしのかわいい友達が、はしゃぎ気味の声でいった…

恋だの愛だの

自粛期間空虚に過ごす中で、何に対しても興味を失っていった。5月ごろだったと思うけど、あの時が一番しんどかった。 私はとても人が好きだし、人を好きになるために生きているし、人間関係をはじめたらいずれその人を好きになることがゴールだと思って接す…

玉子焼き

随分妄想過多な文章が出てきたのでこれも供養っと。 ■■■ わたしが、たまごを食べられなくなったのは、中学生のころだった。ウズラのたまごを口に含んで、そこでひなを孵すという悪趣味な夢を見た。その夢のせいで、わたしはたまごを口にすることができなくな…

林檎

無駄なファイルを消そうとパソコンをいじっていたらこのような物語が出てきたのでここでこっそり供養しますね。 ■■■ その日は、秋のようにすっきりとした青空で、春の日のように心地よい風がそよいでいた。夏のように木漏れ日がまぶしく、冬のように空気が澄…