2020-01-01から1年間の記事一覧

金木犀の香りってググってもわかんないんだもん。

押上の町、路地の中のごくごく客の少ない鉄板焼き屋で海鮮ミックスもんじゃを熱い鉄板の上におしひろげながら、彼は「え~、、うーん」と、唸っていた。 聞けば、巷でいうところの金木犀の香りがわからない、という。10月始め、姿は見えないのにやたら存在感…

隣の席の女が言うことには

「今日私があなたの家に行くこともそのまま泊ることも、神様が決めてるのかな?」って聞いたら、あなたどんな顔するかしら。あなたがどう答えようと、あたしは絶対、「あたしが決めたことだもん」と言い張るつもりでした。 私は行儀のいい娘だから、今は家族…

「エモ」という感性とその背景

「だらしない男女関係にタバコやら夏やらが絡んだとたん「エモい」と形容する価値観にきちんとキショいと思えるようになってからが大人のはじまり。」というツイートを見た。近年若い人たちが感情を説明するときによく使う言葉「エモい」に対する抗議の当該…

さらば140文字の思考

ぼくは高校生の頃からツイッターを使っている。 高校生のぼくにはクラスに友達がいなかったから、ツイッターで知らない人からいいねがもらえるのとかがとても嬉しかった。多いときでは3つくらいアカウントを持っていて、いろんな人をフォローしていた。世界…

あの日のタコへ

最近興味あるものはなんですか? ある日突然、知人にそう訊かれて、答えに窮してしまったが、今では胸を張って堂々と「タコに興味があります」と言ってみたい。 タコの驚くべき知性に関しては既にちらほらと話題になっている。閉じ込められた瓶から脱出した…

別れる女には音楽を教えておきなさい。

何気なく入った洋服屋さんでクラブミュージックのカバーが流れた。どこかで聞いたことがある曲だなと10秒間考えて、それが以前付き合っていた人がわたしに勧めた曲だったことに気付いた。 人の好みに染まりやすいわたしは、その人勧めてくれる曲ばかりを聞い…

夏のいいなり

「夏っていうだけとっても楽しい気もちになって、本当は別になにもしてないのに、なにかをした気になっちゃうから、夏ってほんとに危ないと思う。」 スーパーで買ったオレンジジュースを担いで帰る帰り道、わたしのかわいい友達が、はしゃぎ気味の声でいった…

恋だの愛だの

自粛期間空虚に過ごす中で、何に対しても興味を失っていった。5月ごろだったと思うけど、あの時が一番しんどかった。 私はとても人が好きだし、人を好きになるために生きているし、人間関係をはじめたらいずれその人を好きになることがゴールだと思って接す…

玉子焼き

随分妄想過多な文章が出てきたのでこれも供養っと。 ■■■ わたしが、たまごを食べられなくなったのは、中学生のころだった。ウズラのたまごを口に含んで、そこでひなを孵すという悪趣味な夢を見た。その夢のせいで、わたしはたまごを口にすることができなくな…

林檎

無駄なファイルを消そうとパソコンをいじっていたらこのような物語が出てきたのでここでこっそり供養しますね。 ■■■ その日は、秋のようにすっきりとした青空で、春の日のように心地よい風がそよいでいた。夏のように木漏れ日がまぶしく、冬のように空気が澄…

ポートレイト2

彼女との思い出は、カーテンの陽だまりの中。 小学生の昼休み、放課後、中学生の昼休み、わたしたちはよくカーテンの中に入って話した。小学生の頃は彼女の雰囲気は、白色に、ミルクティ色のブチがある子猫に似ていた。わたしよりも背が低くて腕が細くて、わ…

ポートレイト1

ひと目見た瞬間から、「この人は忘れられない人になる」という予感が身体を貫いた。それは不思議な感覚だった。好きだとか惚れただとか、そういう次元の話はぶんっとどっかに放り出されてしまって、「この人のこと、わたしの人生に取り込みたい」という欲求…

ひと目見た瞬間から、「この人は忘れられない人になる」という予感が身体を貫いた。それは不思議な感覚だった。好きだとか惚れただとか、そういう次元の話はぶんっとどっかに放り出されてしまって、「この人のこと、わたしの人生に取り込みたい」という欲求…